ほんのよこみち なブログ

元不登校の高校生と、ひきこもり→就労準備中の子を持つシングルマザーが、このくにで生きることを考えながら、本と好きなことを語ります。

十二国記『東の海神 西の滄海』を読んで考える、尚隆はなぜ理想の上司と言われるのか。

ほんのよこみちです。

実は地味に十二国記の再読もやっています。

で、シリーズ3作品目が『東の海神(わだつみ) 西の滄海 十二国記 3 (新潮文庫)

 

 皆の大好きな兄貴、延王・尚隆と延麒・六太のお話ですね。

尚隆は、理想の上司と言われているらしく、確かにまあ、そう思って読むと納得できるんですわ。

なので、尚隆人気を考えながら、理想の上司とは何か、なぜ尚隆がそうもてはやされるのかを、考えたいと思います。

 

自由奔放で市中をお忍びで出歩く殿様が、日本人は好き

『東の海神 西の滄海』を再読してまず思ったのは、「時代劇の構成だなあ」ということですね。

暴れん坊将軍』とか、『長七郎江戸日記』とか。

  

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殿様が、お城から勝手に飛び出して、市中の呑み屋とか賭博場とかに出入りして、町民たちの不満を聞いたり、老中などの腐敗を掴むきっかけとなる事件に遭遇したりするの。

好きですよねえ、こういうの。

実際に、そういう殿様がなかなかいないからこそ、憧れるんですよ。

大抵の権力者は、自分たちの城に籠ってしまって、側近がささやく耳に心地のいい言葉にすがって、道を踏み外しますからね。

誰とは申しませんけど。

 

尚隆は、あまり朝議に出て来ない不良王のように臣下から言われますが、その分、王城にいたのでは知れないようなことを知っていたりする王です。

本文中にはないですが、多分、徳田新之助(『暴れん坊将軍』における吉宗の偽名)に近い感じで、出歩いてるんではなかろうかと。

だから、奸臣に騙されない。

情報収集能力は、本当に大事です!

 

王など民にとってはなくてもいい存在であることを、自覚している

尚隆の名君であるゆえんは、ここですよね。

権力者など国民にとって必要不可欠ではないということを、権力者として自覚していること。

国民あっての国だし、民にとっては、その国ですら、なくても構わないということです。

 

国体あっての国……なんて言っちゃう、どこぞの国とはえらい違いです。

その国体って何ぞや? となっても、はっきりしないくせに、国体のために国民を平気で犠牲にする国。

あ、国民体育大会が一番大事って意味じゃないですよ? って、どんだけ脳筋やねん。

 

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つまり、尚隆は自分が王であっても公僕だと認識している、ということですね。

自分が民の平和と安寧につながる事業をやっているからこそ、王として存在していられるということを。

 

十二国記の世界では、民を虐げれば、王も死が待っているだけですから、理性的であろうとするのは当然かもしれませんが。

でも、やりかたがわからなくて、失道しちゃう王も多いからなあ。

自分の行いが正解か否か、を考え始めると、誰でも不安になりますしね。

 

結局、王とは、権力者とは、役割としての責任が前面に出るもの、ということを、理解しているかどうかなんですね。

言い訳のできない、結果がすべての立場であることをわかって、覚悟を決めているかどうか。

そこらへんが、できていない権力者が目につくから、尚隆が理想的に見えてしまうんでしょうね。

 

部下の諫言を聞き入れる器の大きさと、ユーモア感

『東の海神 西の滄海』は、尚隆が登極してから20年後の物語です。

一般に、即位後20年っていうと、相当の年月が経ったように感じますが、年を取らない十二国記の王や官僚たちですからね~。

皆、若い。

若いけど、信頼できる部下も出てきている、そんな発達段階の国家……とでもいうんでしょうか。

 

そんな雁国で、尚隆の側近となっている部下たちというのが、どいつもこいつも諫言を吐きまくった連中という……。

しかも、その諫言の中には「そんなこと言われても冤罪だよなぁ」というのも含まれてたりするんですがね。

それでも腹を立てず、それだけの諫言ができる器量を認め、側近としてしまう器の大きさよ。

共に国を立て直す仲間として、重用しているんですね。

 

そういう側近に対して「猪突」「無謀」「酔狂」などど、別字をつけてしまう尚隆。

人を喰ってるというか、愛嬌あるユーモアというか。

ちゃんと部下に反論の余地を残しているあたりが、人心掌握の妙というか。

偉ぶらない王様。

単に側近だけを特別扱いしているわけではなく、ホントは有能な者はどんどん登用するんだよって、言ってるようなもんなんですよね。

 

側近を称賛するような別字をつけてたら、なんとなく特権階級的な色が強くなって、その輪に入りたい奸臣がおべっかを使うようになると思うんです。

お友だち優遇政治みたいに。

結果、私服を肥やす連中がはびこって、能吏が追い出されてしまう。

それでは国は立ち行かなくなりますから。

 

諫言を受け入れつつも、その度胸に対してツッコミを入れる。

ツッコミにはツッコミで返す余裕を持たせておく。

その器の大きさが、求められるところですね。

 

でも、理想の上司はなかなかいないから、皆が王になればいい

以上のように、皆の求める理想の上司像を考えてきましたが、まあ現実にはそんな人、滅多にいませんしね。

ま、政治家はいないからって諦めるわけにはいかないので、次の選挙で無能者は落とすしかないんですが。

選挙で決められない身近な上役は、もう運一つなので。

 

だから、皆が王になったつもりで考え、行動していけばいいのかなと思います。

 

自らが、親として、先輩として、上司として。

王だったらどうするかを、考えて行動する。

 

自分の家庭を国家として考えたら、どうするか。

自分のいる部署を国家と考えたら、王として何ができるか。

抵抗勢力とバランスを取りながら、どう動くか。

自分自身を、一国と考えたら、その国の産業をどうしていくか。

 

自分自身を国と考えた場合、外に働きに出るのって、出稼ぎになるのかなあってちょっと思ってしまって、これは衝撃でしたね。

ああ、会社勤めって、出稼ぎなんだ。

COVID-19(新型コロナウイルス)で、外出自粛の時代でなかったら、思いもよらなかったかもしれない。

自分自身で産業をつくると言えば起業ですが、サービス業はどこも大変です。

個人事業主の方たちって、本当に「王」なんですね。

 

だから、現状「王」ではないとしても、他国に積極的に学ぶ尚隆の姿勢は、学びたいと思いました。

「指摘されたら、ぼんくらだから猿真似しか能がないと言ってやろう」

なんて、かっこよすぎじゃないですか。

「要は国が富めばいいのだ」 

有能な人間は、もっともっと有能になってゆくのです。

 

私は尚隆とは比べものにならないくらいぼんくらですから、猿真似だって難しいことを自覚しています。

でも、やってみないことには、何も始まりませんよね。

少なくとも、奴隷でいるより、王でいた方が人生の充足感は味わえると思うので。

一度しかない人生ですから。

 

ということで、理想の上司とは

以上のことから、理想の上司とは、

  1. 百聞は一見にしかずで行動する。
  2. 自分は部下の稼ぎの上がりを得ていると自覚する。
  3. 耳に痛い言葉を受け止める。
  4. 偉ぶらない。
  5. 部下の環境をよくするために、常に他者から学ぶ。

ということでしょうか。

 

なるほどと思うことばかりですが、その場になると、結構うまくできなかったりしますね。

でも、はなから諦めてやらないよりマシなので。

 

踏ん張っていきましょう。

ありがとうございました。m(_ _)m